研究概要 |
我々はシトクロムP450scc,P450camに対する一連の酵素化学的、生物物理学的測定によりその基質結合部位におけるヘム活性中心と基質との間の立体特異的相互作用について明らかにしてきた。今年度の研究成果は次のとうりである。 1精製した酸化型P-450cam酵素に基質が結合すると通常のlow-spin EPR siganlとは違うタイプの信号が現れることを見いだした(本年度生化学会、生物物理学会にて発表)。さらに一酸化窒素(NO)を結合させその光解離型EPRスペクトルを解析することにより活性中心付近における基質とヘムとの間の微細な立体構造情報を得ることができた。 2副腎皮質より精製した酸化型P-450c21に基質であるprogesterone,17alpha-hydroxy progesteroneが結合した場合に、P-450camと基質が結合した場合と全く同じタイプのEPR signalが出現することがわかった。さらに20beta-hydroxyprogesteroneが結合した場合にも同様なEPR signalが強く現われることがわかった。すなわちこの新しいタイプのEPR signalはそのP-450酵素と複合体を作りうる基質アナログがその酵素により部位特異的モノオキシゲナーゼ反応を受けるような基質かどうかを判定する非常に有効な指標である可能性があると考えられた。 3事実、再構成系による活性測定によりステロイド21位水酸化反応のみ行っていると思われていたP450c21がこの20beta-hydroxyprogesteroneに対する20位オキシダーゼ反応を行っていることを新たに見いだした。しかもその反応速度は従来から知られているprogesterone,17alpha-hydroxyprogesteroneに対する21位水酸化活性とほぼ同じ程度であった。
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