研究概要 |
脊椎動物視細胞細胞質中のcGMP濃度は光照射に伴って急速に低下する。これは、光退色したロドプシンによって活性化されたGTP結合タンパク質がcGMP分解酵素(PDE)からその調節サブユニット(Pγ)を解離させてPDEを活性化することによって行われている。本研究者は、このPγが細胞内の未知のプロテインキナーゼによってすみやかにリン酸化されることを初めて明らかにしたが、本研究計画ではPγのin vivoでの光依存性リン酸化を明らかにし(FEBS Letters,1994)、さらに、視細胞内のPγリン酸化酵素の精製を試み、いくつかの予備的知見を得た(発表予定)。Pγリン酸化酵素は0.1mM程度のCaCl_2共存下に視細胞外節の膜分画から遊離し、Mono Q等の陰イオン交換カラムに結合し、NaClによって溶出される。視細胞に存在するとされる他のプロテインキナーゼ(ロドプシンキナーゼ、PKA,PKC)から分離され、活性化因子としてホスファチジルイノシトールを要求する。ゲルクロマトグラフィーでは約70kDaの分子量を示すが、ゲル内リン酸化法では42kDaのプロテインキナーゼが検出される。この42kDaのキナーゼは光依存的に活性化されるという非常に興味深い性質を示している。このプロテインキナーゼによるPγのリン酸化の生理的意義は極めて重要なものと考えられ、この点を早急に明らかにしたい。
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