研究概要 |
本研究は,多量子フィルター核磁気共鳴(NMR)法を用い、細胞内電解質(Na,Kイオン)の動的パラメーターを測定し、細胞内における電解質構造を明らかにすることを目的とした。 ^<23>NaNMR,^<39>KNMR法により細胞内Na,Kイオンを測定する。本年は測定感度、照射高周波磁場の均一度、S/N比の向上をはかるために^<23>NaNMR測定用プローブおよび高周波フィルターを改修し、測定データの質的向上を達成できた。また、Naイオンの並進拡散速度測定用の改修を同時におこなえ、今後の研究の展開に対応できる。 犬赤血球浮遊液について、細胞内Naイオンを二量子フィルターNMR法と“魔法角"二量子フィルターNMR法によって、磁気緩和速度を測定した。細胞内Naイオンの中で比較的強く運動が拘束されている新たなコンパートメントの存在が発見された。また、そのNaイオンの存在には“正常"な赤血球構造が保たれていることが、必須であることをあきらかにした。残念ながら、学会誌への発表はイスラエルのグループに先を越されたが、共同研究を今後行なうこととなった。 潅流唾液腺の細胞内Naイオンについては、好気条件非刺激時、アセチルコリン刺激時、Na/K-ATPase阻害時に細胞内Naイオンを二量子フィルターNMR法と“魔法角"二量子フィルターNMR法によって、磁気緩和速度を測定した。腺分泌時に輸送されるNaイオンについては、比較的強く運動が拘束されている新たなコンパートメントの存在は確認できなかった。この新しい分画の細胞内Naイオンは、輸送等の生理活動には直接関与せず、むしろ膜やタンパク質の構造を保つ役目を果たしていることが示唆された。
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