研究概要 |
1。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、以下S.cervisiaeと呼ぶ)のリボソームRNA(rDNA)遺伝子転写制御変異rrn3,rrn6,及びrrn7遺伝子を各々相補するRRN3,RRN6,RRN7遺伝子をクローン化し、その全塩基配列を決定した。その結果RRN3は627アミノ酸から成り分子量は約72,000、RRN6は894アミノ酸から成り分子量は約10,2000、RRN7は514アミノ酸から成り分子量は約60、300であった。各々の蛋白は既知の蛋白とは相同性を示さなかった。遺伝子破壊の結果、各々の遺伝子は細胞増殖に必須の遺伝子である事が明らかになった。RRN6とRRN7はS.cerevisiae細胞内で複合体を形成し、preinitiation complexに含まれている事が示された。一方RRN3がpreinitiation complexに含まれるか否かは不明である。しかしRRN3を過剰発現すると細胞増殖に遅れが見られる事からRRN3も細胞増殖に必須の蛋白と相互作用している事が考えられる。 2。S.cerevisiae以外の酵母にRRN3,RRN6,RRN7ホモログがあるか否かを知るために、rrn3,rrn6,rrn7各変異を相補する分裂酵母(S chizosaccharomyces pombe,以下S.pombeと略す)のcDNA及びKluveromyceslactis(以下K.lactisと略す)のゲノミックDNAをスクリーニングした。その結果、温度感受性rrn3変異を相補するS.pombe遺伝子SRN31とSRN32,及びK.lactis遺伝子SRN33を見出した。SRN31遺伝子に関しては全塩基配列を決め、SRN31は434アミノ酸から成り、その分子量は50、200である事が示された。SRN31はRRN3と相同性はなかった。SRN32とSRN33はまだ解析していない。 3。S.pombeのリボソームDNA転写欠損遺伝子を単離する事を目的としてRNAポリメラーゼIIによる35SrDNAの転写を試みた。RNAポリメラーゼIIで読まれるプロモーターとしては,nmt1プロモーターを用いて、nmt1-35SrDNA融合遺伝子を構築しRNAポリメラーゼI温度感受性異変株(nuc1変異株)に導入した。導入株の高温での増殖は完全には回復しなかった事よりnmt1プロモーターではrRNA転写量が少ない事が明らかになった。
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