研究概要 |
本研究の目的は,カルシウムシグナルの発生と受容伝達の分子機構を明らかにすることである.前年度までに,酵母の性フェロモンによって誘導されるCa^<2+>の流入に欠損をもつ突然変異株mid1およびCa^<2+>の受容に欠損をもつと考えられる突然変異株mid2の解析を行い,MID1遺伝子産物(Mid1p)は種々のイオンチャネルの膜貫通ドメインと相同な領域をもつこと,およびMID2遺伝子産物(Mid2p)は動物のalpha-ラクトアルブミンのCa^<2+>結合領域と相同な領域をもつことを明らかにしている.本年度は,Mid1pの細胞内局在部位と機能ドメインの同定,およびMid2pのCa^<2+>結合能の研究を行った.その結果,Mid1pは形質膜に貫通して存在すること,およびMid1pのC-末端ドメインは栄養増殖には必要ないが,性フェロモンの作用を受けたときのCa^<2+>流入に重要であることを明らかにした.Mid2pは大腸菌で大量生産し,部分精製し,^<45>Ca^<2+>を結合することを示した.また,MID2遺伝子は多コピーでも低コピーでもmid1変異を抑圧できたが,MID1遺伝子はたとえ多コピーでもmid2変異を抑圧できなかった.したがって,Mid2pはMid1pの下流ではたらくと考えられる.この結論は,上記のMid1pがCa^<2+>流入に関与し,Mid2pがCa^<2+>結合能をもつという知見と一致しており,重要である.
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