研究概要 |
ハーダー腺由来細胞成長因子(HGDGF)はモルモットなどのハーダー腺に存在が確認された新しい細胞成長因子である。ハーダー腺が眼瞼に開口していることから角膜の損傷治癒に働いていると考えられているが詳しい作用については不明な点も多い。これまでの実験でハーダー腺由来細胞成長因子が神経細胞の増殖、分化に関与している可能性が示されたので、本研究では神経細胞の分化成長に関して本因子がどのように働いているかを検索した。視神経細胞の分化には様々な細胞成長因子、FGF,PDGF,NGF,VEGF,CNTF等が発生及び分化の過程で働いていることが実験的に示されている。今回実験に用いたニワトリ胚神経網膜は発達時に一部の細胞がアポトーシスを起こすことが形態学的な研究から報告されている。そこで、ニワトリ胚神経網膜の細胞培養系を用いて、HGDGFを中心として、アポトーシスと細胞長因子の関係について実験を行った。その結果、神経網膜培養細胞において繊維芽細胞成長因子がアポトーシスを引き起こすこと、ハーダー腺由来細胞性長因子がそれを阻害することを見出した。ニワトリ胚神経網膜培養細胞に対するbFGFのアポトーシス促進作用はHGDGFの同時投与によって抑制され、シューラミンの添加によっても抑えられることを見いだした。このことは眼の発生分化においていくつかの細胞成長因子が強調して働いている一例と考えられる。その他の因子、EGF,TGF,PDGF,NGF,TNF,IGF等はこの反応に関係ないことも明らかにした。さらにラット神経前駆細胞ではHGDGFは細胞の増殖を促進する。またbFGFも同様に増殖を促進するがこの2つの成長因子を同時に投与しても相乗効果は認められず、その他の因子は増殖促進、相乗効果共にないことも明らかにした。
|