研究課題/領域番号 |
05680675
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経化学・神経薬理学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
播口 之朗 大阪大学, 医学部, 助教授 (10028459)
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研究分担者 |
武田 雅俊 大阪大学, 医学部, 講師 (00179649)
西村 健 大阪大学, 医学部, 教授 (70028455)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1994年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1993年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / 老人斑 / アミロイド / APP / ibotenic acid / カテプシンD / クラスリン / GFAP / ubiquitin / MAPIa |
研究概要 |
アルツハイマー病(AD)脳の老人斑に沈着するアミロイド線維の構成蛋白はアミロイドβ蛋白前駆体(APP)から切り出される38-43アミノ残基のアミロイドβ蛋白(Aβ)である。APPは1回膜貫通型の受容体蛋白としての構造を有しており、その機能を考える場合に細胞内に位置するC末端側部分の動態を明らかにすることが重要である。本研究では、このような知見に基づきAD脳におけるAPPのC端部分の分布について検討することが老人斑形成機序に寄与すると考えた。 APP分子C末端断片の動態を検討するために、Multiple Antigen Peptide(MAP)構造をもつAPP分子のC末端アミノ酸14残基合成ペプチド(APP 682-695,YENPTYKFFEQMQN)に対するモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を作製した。これらの抗体を用いてAD脳の海馬を含む側頭葉領域での免疫組織化学的検索を行った。 抗血清R2Bでは皮質の神経細胞及びその周辺に多数の顆粒状蓄積物、血管壁周囲を陽性に染色した。 一方、モノクローナル抗体6H・12では海馬周辺を中心に典型的な老人斑とは異なる斑状の細胞外構造物が認められた。この構造物は健常者脳では殆ど認められず、ADに特徴的と考えられた。また、R2Bの認識する構造物とは形態、出現頻度、部位ともに異なっていた。AD脳連続切片を用いた検討では、このAPP分子C末端14残基配列に対するモノクローナル抗体で染色された異常構造物は抗Aβ抗体では染色されなかった。 AD脳皮質ホモジネートの各抗体を用いたウエスタンブロットによる検討において、6H12は23、29、30KDaのバンドを染色し、6H12の染色する構造物の成分としてAβを含んだAPPのC端部分断片が存在する可能性が示唆された。APP分子C末端14残基配列はin vitroにおいてフィラメント様構造物及びアモルファス構造物を形成したが、その構造物の免疫電顕の結果、R2Bは直径7-10nmのフィラメント様構造物と結合したが、6H12はフィラメント様構造物ではなく、むしろアモルファスな構造物を強く認識した。これは6H12とR2Bの認識するコンフォメーションが異なることを示しており免疫組織化学の結果と一致した。 本研究によりAD脳内で特殊なコンフォメーションをもつAPPのC端部分が細胞外で斑状に集積し、その構造物にはAPPのAβ部分が含まれている可能性があることが示唆された。老人斑形成においてAPPのC端部分の関与については報告は少ないが本研究で明らかにされた集積物が老人斑形成の中間体である可能性も考えられ今後その点について検討を加えていく予定である。
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