研究概要 |
自由行動下ラットの居場所と海馬体の単一ニューロン活動を同時記録するシステムを開発し、新しい場所学習課題を用いて場所ニューロンに対する学習・認知に対するニューロン応答様式を調べた。その結果下記の研究成果を得た。 1、動物を動かす動因として脳内自己刺激(ICSS)を用いた場所学習課題は非常に強い動因のため学習達成が数試と早く,短時間でニューロン応答の可塑性を研究するのに最適であることがわかった。 2、訓練していないラットに新たな場所学習課題を訓練させると,学習に伴いニューロン活動の場所依存性が出現するニューロンを見つけた。これは場所の意味、または外界の手掛かり刺激と自己の居場所との関係を学習したことを意味し、単にオープン・フィールドに入っているからといって場所ニューロンが形成されるものではないことを示唆する。 3、場所の意味の違い、つまり場所と報酬の連合によって海馬体の場所フィールドがどのように変化するかを調べると,場所フィールドが報酬位置の移動に従って移動する可塑性ニューロンが存在した。 4、ニューロン発火様式と行動の相関を詳細に解析すると、動物の進行方向が変わるとき海馬体ニューロンが発火することを見つけた。これは海馬体がある特定の場所でこれから進むべき方向を計算し,その結果を反映してラットが進行方向を変えていることを示唆する。 5、Schaffer側枝を刺激(100Hz,100発)すると海馬体CAlニューロン活動の抑制,空間学習課題遂行の障害がみられた。回復後には海馬体CAlニューロンのシナプス情報伝達効率の変化による情報処理様式の再編が見られた。 以上の結果は米国,日本の学会で発表されると同時に現在投稿準備中である。当初の目的の全てが達成されたわけではないが,数多くの新しい知見が得られておりこれらを中心に研究を発展させていきたいと考えている。
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