研究概要 |
大脳新皮質の非錐体細胞は,その形態的・免疫組織化学的多様性からみると,生理的多様性があると思われるが,全く知られていない.本研究では,前頭皮質の脳切片標本で,微分干渉顕微鏡による直視下での細胞同定・ホールセル記録・細胞内染色・免疫組織化学の技術を組み合わせて,新皮質V層の非錐体細胞について,次の三点について明らかにした。 (1)非錐体細胞の電流-電圧カーブ・スパイク発射様式等の生理学的性質から、非錐体細胞のなかには、少なくとも二種類の生理的サブタイプがある。一つは、Low Thrshold Spike cell(LTS cell)で、もう一つは、Fast Spiking cell(FS cell)である。(2)非錐体細胞の二種類の生理的サブタイプは軸索分布のパターンが異なり、層構造・垂直構造に関連して神経支配様式が違う。(3)非錐体細胞の免疫組織学的マーカーである二種類のカルシウム結合蛋白質(parvalbumin,calbindin D28K)は、V層では、別の細胞に存在し、非錐体細胞の生理的サブタイプと相関している。二種類のカルシウム結合蛋白質を持つ細胞はV層では、抑制性伝達物質GABAにも陽性なので、二種類の非錐体細胞はGABA作働性の抑制性ニューロンと考えられる。これらから、大脳新皮質V層のGABA作働性の抑制性非錐体細胞は、発火モード・軸索分布・神経活性物質の上から、少なくとも二種類に機能分布していると思われる。
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