研究概要 |
血管壁の構造を血管内から観測できる血管内超音波イメージング法は,冠動脈疾患や動脈硬化症の極めて有力な形態診断法として注目されている。本研究は,形態・硬さ・流れを同時計測できる新たな血管内超音波診断法の可能性を追求したもので,以下の成果を得た. 1.血管壁の音速,音響インピーダンス,反射率など,血管壁の基本的音響特性を家兎とイヌの摘出血管を対象に測定した.測定法には超音波RF信号の周波数スペクトル解析に基づく手法を使用し,その結果血管壁のような薄い組織でも十分な精度で音速等を決定することができた.また,血管壁と血液の音響インピーダンスには1〜2%程度の違いしか認められず,エコー強度がヘマトクリト値や血管壁音響インピーダンスの変化により数倍にも変わりうるなどの知見を得た. 2.血管内エコー法を用いて形態情報のみならず血管の硬さをも測定できる手法を開発し,精度,実用性について検討した.測定精度の向上を図るために,1拍動中で連続的に内腔断面積変化を測定し,弾性率を血圧-断面積曲線の回帰式から算出するアルゴリズムを考案した.さらに,本法によりイヌ大動脈の弾性率分布を計測して,我々がこれまでに開発した高精度な血管内トランスデューサ(動脈硬化度測定用,イメージング機能なし)の測定結果と比較したところ,両者はよく一致し(相関係数0.97),開発手法の有効性を実証できた. 3.血流量をも同時計測できるビーム直交型相関血流計測法の開発を行い,その基本特性を理論的,実験的に検討した.本手法は,一定時間間隔ごとに取得されるRFエコー間の相互相関が時間とともに低下する現象を利用したもので,本法によれば,超音波ビームと直交する流れを単一振動子で測定でき,新たにドプラ用振動子を付加することなく流れを同時に計測可能である.散乱体ファントム速度と管内流速の測定実験を行い,方法の妥当性を確認するとともに,測定精度を求めた.
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