研究概要 |
生体内の電気的活動に伴って微小な磁場が体外に誘起されることが知られている。このような生体磁気信号を高感度の磁気センサーSQUIDを用いて測定し,これから生体内の活動や機能を推定して各種疾患の発見や機序の解明を目指した研究が注目されている。本研究は,多チャンネルSQUID素子によって測定されたデータから磁気信号源の位置とその挙動を推定するための新しい手法としてアレイセンサによる信号源推定法に用いられている信号部分空間法を活用する方式を提案し,その有効性について検討したものである。 まず,ビオサバールの法則を用いて体外で測定されたデータから信号源の様相を推定する生体磁気逆問題の基本式を導出した。この基本式から磁気信号源の個数,位置,方向,大きさを求める手法としてMUSIC(Multiple Signal Clasification),信号部分空間法,重み付き信号部分空間法の3つの方法について計算機シミュレーションによってそれぞれの信号源推定能力について検討した。その結果,MUSICは複数の信号源の間に相関がある場合や観測雑音が多い場合には推定能力が著しく劣化するが,測定データが多いときには最尤推定法に漸近する重み付き信号部分空間法は信号源間に相関がある場合や雑音が比較的多い場合でも精度よく信号源の各パラメータを推定できることが明らかとなった。よって,重み付き信号部分空間法が最も適切な方法であると考え,この方法を用いて推定を行ったとき,生体磁気信号の測定条件と信号源の各パラメータの推定精度との関係を明らかにした。本研究で開発した推定法を用いて,心臓から誘起される磁場を多チャンネルSQUID素子を用いて実際に測定した心磁データから信号源の推定を行った結果,ほぼ妥当な推定結果を得ることが出来た。
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