研究概要 |
本研究では,非線形の逆問題を媒質定数に関係した評価関数(非線形汎関数)を最小にする最適化問題に帰着させて,非線形最適化法に基づく再構成アルゴリズムを以下の手順で開発した.水中に浸した2次元の生体モデルを対象にするために,散乱体および外部媒質ともに損失がある場合の逆散乱問題について考察した. まず,散乱界の理論式と測定データとの差の絶対値の2乗和により与えられる汎関数を定義し,汎関数の勾配をフレシェ微分により求めた.そして,汎関数を最小にするために,最急降下法を適用して解くアルゴリズムを定式化した.また,共役勾配法を適用するアルゴリズムも定式化した.次に,この定式を離散化し,数値計算をを水中に浸した2次元の生体モデルに対して行なった.事前情報として,物体の存在領域を用いた. 以上より,不均質性の強い生体組織でも高精度の再構成像が得られた.しかし,問題が悪条件になるために,雑音に対して弱いことが分かった. さらに,光波の領域に限らず波動の強度のみしか測定できない場合に,ボルン近似やリトフ近似が成立しない場合でも強度情報のみを用いて物体の屈折率分布を再構成できるように拡張した. 今後の課題は,再構成アルゴリズムを雑音にたいしてロバストにするために、正則化などの手法を数値計算のアルゴリズムに組み込むことである.また,実際の問題に対応するために,3次元の生体モデルに対しての再構成アルゴリズムを定式化することである。
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