1「京都大学人文科学研究所所蔵正始石經拓本の整理」については、本研究所が所蔵する正始石經拓本の全てを 蔦眞撮影し、刻された部位/原石の所在/来歴の調査を完了した. 2「正始石經の存亡状況の調査」については、全国の図書館/美術館/個人コレクターなどに問い合わせたけっか、新たに以下のところに正始石經の拓本が所蔵されることを確認した.大阪市立美術館/大谷大学/国立国会図書館/東京国立文化財研究所/東北大学/東洋文庫/龍谷大学/北川博邦氏.これらのうち、北川博邦氏所蔵のものは、他所に所蔵されていない極めて貴重なものである. 3「原石の調査」については、原石の新たな所蔵者は確認できなかったが、京都国立博物館/京都・藤井有隣館/東京・書道博物館において原石を詳細に調査することができた. 4「テクストについて」は、隷古定尚書舊鈔本との比較が極めて重要であることが明かになり、隷古定尚書舊鈔本の調査に着手したが、これまでまとまった研究がないため舊鈔本を實際に見るために全国の図書館を訪ねなけれはならず、未だに十分な資料を収集し得ていない. 5「字體について」は、1の拓本整理と並行して「正始石經字書」の作成を進め、ようやく完了した.三つの字體の来歴の考證/時代状況の研究については、この字書を活用して今後研究をすすめる. ○「学術文化との関係」については、上記1〜5の作業がようやく完成したはかり、もしくは現在考察検討進行中であり、十分な成果を見るに至っていないが、学術への紙の普及の影響の大きさが、明かになってきた.
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