1.現象学における他者問題の諸相 (1)フッサール未公開研究草稿のトランスクリプション稿を入手し(和田渡・阪南大学助教授)、フッサール現象学における時間問題と他者問題との関連の精査を行った。 (2)シェーラー、レ-ヴィット、サルトル、メルロ=ポンティらの現象学派の哲学における他者論の展開過程を解明し、論文の形で公表した(岩波講座・『現代思想』第VI巻「現象学運動」所収論文)。またこの件に関して、専門家との討議を行った(熊野純彦・北海道大学助教授)。 (3)『存在と時間』期のハイデガ-の、他者を含む実践的世界の構造の分析を、テキストに密着して行った(慶応議塾大学での平成5年度の哲学論理学特殊講義)。 (4)レヴィナスの他者の哲学と現象学との関連を、彼の第一の主著『全体性と無限』に焦点をしぼって分析した(東洋大学での平成5年度の哲学特講)。またレヴィナスの他者論とフッサールの時間論との関連に関する論文を改訂し、英訳稿を作成した(Husserl Studies誌に投稿中。校閲・梅津光弘・慶応議塾大学専任講師)。 2.精神医学と現象学との交流と対話 (1)専門の精神医学のもとを訪れ、臨床の実際を視察し、意見交換ならびに講演を行った(九州大学医学部精神科・松尾正医局長、沖縄玉木病院医師・中島聡氏)。 3.英米の道徳・政治・法哲学と他者の論理学 (1)英米系の道徳・政治・法哲学に関しては、辞書、辞典類を中心とした基礎文献の収集と整備を行った。
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