本研究では、正倉院御物の諸目録類のうち、唯一の公開目録であり、その意味で基本的台帳とみなしうる「正倉院棚別目録」を対象とし、データベース化のための基礎研究を行った。その際には、奈良国立博物館でほぼ毎年開催されている「正倉院展」の展覧会目録とデータをリンクさせデータベースに付加価値を加えることにした。 データベース化の方法としては、フルテキストデータベースのような内容羅列的方法は採用せず、構造的データベースを目指すことにした。 構造的データベース作製のツールには、RDBMSを採用した。RDBMSは対象分析に基づき様々なテーブルを作製し、それらの間を関係付けるものである。今回は、様々なテーブルとその関係のパターンを模索し、テスト入力を繰り返したが、結局、単一テーブルによる入力が良いという判断に達した。というのは、複数のテーブルを関係付ける方法によると、なるほど、対象をより高度に構造化できるものの、データの管理が繁雑になり、データベース構築後の関係機関へのデータ公開という意味でも得策ではないと思われたからである。 研究補助金は、文化財に関する類似研究を行っててる機関等の見学、文献調査、図書購入、テスト入力のためのコンピュータ環境の整備、入力要員の雇用必要事務用品の購入などに使用し、研究遂行に大いに役立った。 今後機会があれば、データベース公開促進科学研究費補助金により、今回設定した枠組みにしたがって、本格的なデータ入力を行い、広くデータを公開し、美術研究の発展に寄与したい。
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