本研究目的を達成するために、歩行動作の改善をどうようにとらえるかが課題であった。動作は、心理的なプロセスと外に現れたパフォーマンスが、ほとんど同時的であるところに大きな特徴があるが、外に現れたパフォーマンスを性格に記述していくことで、かえって、主体の認知様式をそれに反映させることができよう。このような点から、歩行動作プロセスを正確にたどるために、主要設備として、フットスイッチセンサー使用した。この装置によって、足圧の分析や加圧時間などの歩行分析が解析でき、さらに設備として購入したビデオプリンターによって、画像からの分析も行った。歩行動作の改善に伴い、現有設備であるデジタイザー座標解析入力装置で測定される動作空間認知との関係性が測定され、動作空間認知が正確性、および偏倚性において変容していった。特に、左右方向の正確さは向上し、外界との相互作用の変化が特に左右方向に影響することが確かめられた。主体の環境へのダイナミックな関係も検討、分析された。 上記の結果を踏まえ、スポーツ場面での適用も検討した。具体的にはゴルフのパタ-のパフォーマンス検討であった。初心者3名の被験者での少数事例研究であったが、ここでも、安定した歩行動作の獲得によって、遂行動作の結果の変動が少なくなり、基礎的な研究の確認がなされた。 パフォーマンス優位であった動作研究は、近年、認知的な要因の重視へと大きく変換してきている。その意味で、パフォーマンスと認知的な要因の両方の関係を見ていく本研究の意義は大きいと考えられる。また、臨床的データが蓄積されている、障害児への動作訓練、また、不登校児へのカウンセリング場面での動作のやりとりの意義を確認するための実験的基礎研究をなすものと考えられる。
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