本研究の目的は、不確実実況として、大学生の職業選択場面を取り上げ、職業決定過程における個人差の生起メカニズムを明らかにすることである。本研究では、まず第1に、大学生112名に対して、質問紙法によって、意思決定に関わる個人的傾向性(決定時のストレス11項目、職業レディネス尺度20項目など)を測定した。第2に、不確実な状況における決定プロセスにおいて重視する要因の評定(22項目)、第3に、就職活動の前半、後半における行動の頻度(訪問会社数など8項目)、第4に、就職先決定後の反応と決定の評価についての評定(12項目)を求めた。結果は、各項目群ごとに因子分析にもとづいて、下位尺度得点を算出した。そして、相関分析などによって以下の点を明かにした。 1.意思決定者の個人差が及ぼす効果:意思決定時におけるストレスの高い人は、職業レディネスでは[回避]傾向にあった。さらに、[回避]傾向の高い人は、決定プロセスにおいては、[周囲の人の影響]、[所属する集団に対する配慮]の得点が高かった。さらに、反応スタイルとしては、[時間的焦り]、[短慮]、[決定引き延ばし]などの傾向があった。一方、[自己情報が明瞭]な者は、これらの傾向はなかった。 2.意思決定過程の個人差:望ましい[選択]的な意思決定スタタイルを取る人は、[積極的]な職業レディネスをもっている。逆に、[周囲の人の影響]が大きい人は、[選択]的な決定スタイルを取っていない。また、[偶然性重視]や[回避]的な職業レディネスは、望ましくない決定スタイル[短慮]や[決定引き延ばし]に結びついている。 全般的傾向として、意思決定のための情報は、就職活動の後半は前半に比べ、[会社の人の印象]や[自分の成長]を重視するのに対して、逆に、[会社の知名度・人気]は重視しなくなる。
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