今年度も、引き続いて人間の色覚のメカニズムにおける中心視と周辺視の相違について研究を進めた。この研究成果の一つとして昨年度(1992年)発表した論文"Counter-balancing mechanism of yellow-blue opponent-color system against macular pigment" は、平成5年度日本心理学会研究奨励賞を受授賞した。これは、周辺視におけるY-B(黄-青)システムには黄斑色素の影響に対する自動的な補正機構が存在する可能性があるという非常に興味深い現象を発見した点が評価されたものであり、本研究が順調に成果を蓄積しつつあることを示している[鳥居修晃・立花政夫共編『知覚の機序』(知覚と認知の心理学4)4章:周辺視における反対色過程の特性(1993年)を参照]。現在も、この補正機構のさらなる解明に向けて、本年度の科学研究費補助金によって購入した高解像度radius カラー・ディスプレーを用いた色覚実験装置によって実験を進めているところである(刺激の測定には平成3年度の科学研究費補助金によって購入したミノルタの色彩色差計CL-100システムを用いている)。また、同時にこれまでのデータを基に周辺視色覚のモデルも構築しており、これに関しても順調によい結果が得られつつある。この周辺視のモデルが完成すると、2°視野の混色関数と10°視野の混色関数との関係が非常にうまく説明できるようになるものと予想される。したがって、この点からも、本研究には人間の色覚のメカニズムにおける中心視と周辺視の相違についての非常に大きな貢献が期待できる。
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