研究概要 |
都築(1993)は、多義語の連想基準表(斎藤・都築、1989、1991)に従って、多義語(プライム)と漢字表記(ターゲット)間の文脈依存的連想強度と文脈独立的連想強度を操作し、音韻的プライミング効果にもとづいて、日本語文における語彙的多義性の解消過程について検討した。その結果、Till,Mross,&Kintsch(1988)等と同様に、(1)SOA300msの時点では文脈が存在していても多岐的アクセスが生起し、(b)SOA500msの時点では、文脈依存的連想強度による促進・抑制効果が見いだされた。 本研究は、(a)文脈依存的連想強度の要因として、文脈・多義語提示による漢字表記の連想強度が高いH(high)条件と、連想強度が低いL(low)条件を設定し、さらに(b)文脈独立的連想強度の要因として、多義語単独提示による連想強度が相対的に高いD(dominant)条件と、相対的に低いS(subordinate)条件を設定し、SOA100msの時点における2要因の効果について検討することを目的として行った。 その結果、多岐的アクセスの生起が確認され、文脈の規定性が強いH条件において、文脈独立的連想強度に基づいたプライミング効果が検証された。したがって、SOA100msの時点の多岐的アクセスにおいて、心的辞書内の連想強度の要因が作用することが示されたと解釈できる。本実験で示された交互作用を説明するためには、モジュール説(Foder,1983)をふまえた単純な2段階モデルでは不十分であり、相互活性モデル(McCleland,1987)を考慮に入れることが必要である。
|