本年度の研究実施計画には、(1)実験課題の方法論的検討、(2)複数の手がかりが与えられた際の随伴性判断の検討、(3)随伴性判断を行う際の情報処理の過程モデルの記述、の3つの点を挙げた。 第1点に関しては、パソコンを用いた個人実験を想定した実験課題及び、集団実験を想定した実験課題を作成し、それらを用いて基礎的なデータの収集を行なった。第2点に関しては、動物の連合学習の研究領域で多く研究のなされているブロッキングの現象を、個人実験、集団実験のいずれの事態においても確認した。特に動物実験の事態では逆行ブロッキングの現象はほとんど確認されていないが、は人間の随伴性判断の事態において逆行ブロッキング様の現象が生じる事が確認された。これらの研究で用いられた実験課題では、“行動"とその“結果"との間の随伴性の評定を被験者に求めている。従来の研究では“結果"の価値について独立変数として取り上げられる事がほとんどなかったが、本研究では“結果"の価値が随伴性の判断に影響を及ぼす事が事実として示された。これは本研究で得られた新しい知見である。 研究業績としては以上の研究及び、本研究領域の最近の研究動向に関するレビューが、次項に挙げた図書の中の1章として出版された。また、本研究で明らかになった実験事実については1995年度中に開催されるいくつかの学会における発表及び、雑誌への論文の投稿を予定している。 第3点の関しては、本年度中に行なわれた実験及び、過去の知見を総合して、帰納的推論及び連合学習の枠組みから計算機上で情報処理の過程モデルを作成する試みが現在進行中である。
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