研究概要 |
色単語が色名とは異なる色で着色されている時、その色を命名することは、同じ色のカラーバッチの色命名をするより困難である。これをストループ効果という。ストループ効果は、言語における自動的処理と非言語的刺激である色命名との葛藤を測定している。元来ストループ効果は、高度に自動化されている言語すなわち母国語を主として研究されてきているが、パイリンガルの被験者では2つの言語間にもストループ効果が生じることが報告されている。本研究では公教育で英語を8年間学習してきた日本人大学生と母国語が英語で日本の大学に留学している学生について色と色単語のストループ効果干渉量を比較した。色刺激は非言語的刺激ということでは線画刺激と同類と言える。方法:使用した色は赤、青、緑、黄。刺激の提示と反応の測定にはパーソナルコンピューターを用いた。色単語を黒文字で提示するA条件、色パッチを提示するB条件、単語名と不一致な色で色単語を提示するC条件。手続き:A条件とC1条件は日本語、B,C2条件は日本語と英語で色命名をする。結果:日英の比較はB,C2条件の反応時間で行う。C2条件からB条件の反応時間を減算して干渉量を求めると、日本人大学生では、日本語-日本語の言語内干渉の方が日本語-英語の言語間干渉よりも大きく両者の間には有意差がみられる。しかし留学生については、2つの干渉量はほぼ等しい。留学生も日本人大学生も母国語を獲得してから後に第2言語を獲得している点では、言語的背景は等しいと言える。留学生で、日本語-日本語間にも大きな干渉がみられたことについては、現在日本で生活し日本語に密着していることが原因のひとつとしてあげられるだろう。今後の発展として、妨害刺激の単語を視覚提示だけではなく聴覚でも提示して非言語刺激の命名時間に及ぼす干渉量を測定することが考えられる。
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