研究概要 |
本研究では,まだ生起していない結果を仮定し,その結果の原因説明を求めること,および,その結果を単に想像することが,現実の行動に及ぼす効果について検討した.大学生女子206名を,成功説明条件,成功イメージ条件,失敗説明条件,失敗イメージ条件,および,統制条件に無作為に配置した。課題(アナグラム課題)の説明を行った後,各条件の操作を施し,現実の課題成績の予想を表明させた。次に,各条件の半数の被験者について,課題に対する動機づけの程度を測定した。そして,課題を実施し,その後,その他の従属変数の測定を行った。主な結果は次のとおりである。 1.結果の種類(成功,失敗)に関わりなく,仮定された結果を説明することが現実の行動に及ぼす効果は確認されなかった。 2.結果の種類に関わりなく,仮定された結果を想像することが現実の行動に及ぼす効果は確認されなかった。 3.失敗説明条件を除くその他の実験条件では,統制条件に比べ,現実の遂行成績を高く予想する傾向がみられた。 なお,仮想結果の説明に用いられた原因(理由)について検討を加えたところ,結果の種類(成功,失敗)に関わりなく,実験者が意図していた内的で安定した原因(例えば,語彙力や頭の回転の速さなど)をあげている被験者が3割に満たなかった。このことが,本研究の仮説が検証されなかった最も大きな原因であると推測される。
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