小学6年生の双生児34組(一卵性19組、二卵性15組)を対象に、英語教授法に関する双生児統制実験を行った。すなわち2つの異なる教授法群(コミュニカティヴ・アプローチ「CA」と文法的アプローチ「GA」)に双生児きょうだいを別々に割り当て、8日間のべ7時間の教授・学習過程後の成果を比較した。ここで一卵性双生児は遺伝要因を完全に共有しているので、50%の遺伝的関係である二卵性双生児と比較することによって、学習成果に及ぼす遺伝要因の効果、教授条件の効果ならびに両者の交互作用を明らかにすることが可能である。 口頭による会話能力では遺伝規定性が見いだされたが、筆記による読む・書く・聞く・文法の各能力では遺伝規定性は見いだされなかった。一般知能、言語性知能、ならびに理科の能力の3つの適性次元と各教授法との間に、統計的にマージナルな交互作用が見いだされた。これらはいずれも、それぞれの適性において、高いものではGAが、低いものではCAがそれぞれ有利であることを示したもので、これまでの研究を追証するものであった。これは表現型と教授法との交互作用である。しかし各適性次元の双生児きょうだいの平均値を遺伝子型の推定値とみなすと、遺伝子型と教授法との間に、その傾向はあるが統計的に有意な交互作用は見いだされなかった。なお筆記能力ではGAが、また会話能力ではCAがそれぞれ有意であることは、本研究の教授法の妥当性を示したものといえる。
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