本研究では、怒りと自己開示が攻撃に及ぼす効果、すなわち怒りが攻撃を促進する要因となり、自己開示が攻撃を抑制する要因となることを、状況要因(研究1)と特性要因(研究2)の両側面から検討した。被験者は男女大学生であり、研究1では287名、研究2では187名であった。 研究1では、怒りの有無と自己開示の程度を操作した場面を想定し、被験者がその場面ではどのような行動をとるか、またどのように感じるか質問紙を用いて回答を求めた。結果、怒りは攻撃を促進し、表面的な開示では攻撃に対し効果が得られなかったが、親密な開示は攻撃を抑制する要因となったことが示された。それは自己開示が相手に好意を抱かせ、相手に理解された結果であることが示された。理解よりも好意の方が攻撃の抑制の効果が大きかった。 研究2では、Buss(1958)による攻撃性尺度と短気尺度、さらにMiller et al.(1983)によるオープナ-・スケールを使用し、この3スケールの関連性をみることにより特性要因の効果を検討した。結果、攻撃性と短気は有意な正の相関があり、両者はオープナ-とは有意な負の相関があった。さらに、攻撃性の中では、言語的な攻撃が最もなされやすいことが示された。また、短気尺度で抽出された2因子は、オープナ-との関連性から、異なる特性を持っていることが示唆された。すなわち、男性では、オープナ-は「挑発的苛立ち」因子と有意な正の相関の傾向が見られたのに対し、「内面的苛立ち」因子とは、有意な負の相関が見られた。 以上から、状況要因と特性要因の両方で、怒りが攻撃を促進し、自己開示が攻撃を抑制することが示されたと言えよう。
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