1.まず、児童・青年心理学および精神医学・臨床心理学における、前思春期を含む症例をはじめ、関連する文献・資料を広く収集、検討した結果、「独我論」という観点から青年期およびそれ以前の自我体験について研究した、渡辺恒夫の一連の調査資料と論考を発見した。主にその知見を参考に、大学生を対象とした自我体験の質問紙を作成し、施行した。 2.次に、自我発達上の変化を非言語的に傍証するために、これまでの研究で収集した風景構成法(描画)の大学生の資料(三百名分)を追加収集し、発達段階の判定についての尺度の改良を試みた。その結果、大学生においても、すべてが上位の構成段階に評定されるわけではなく、さまざまな段階へのばらつきがあることがわかった。そこで、リニアな発達段階としての尺度という考え方を改め、十歳以上〜成人・臨床群にも共通して適用できる指標という意味で、新たに「構成型」(タイプ)という分類のマニュアル作成を行なった。詳細については平成6年度の甲南大学学生相談室紀要の誌上に報告する予定である。 3.また、研究者が心理療法を行なった児童・青年の事例のうち、自我体験に関連あるものについて検討を加え、その一例については平成6年度の日本学生相談学会において「エリート女子大学生の自己再確立の問題」として発表する予定である。 以上が、今年度行なった研究内容である。今後の課題として、1.の質問紙の分析と、事例資料の蓄積が残されたので、順次進めていく予定である。
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