【研究目的】発達障害児に対して、パーソナルコンピュータを用い、その最小ハード構成(本体、ディスプレイ、キーボード)で見本合わせ課題を実施することを目的とした。その際の課題としては、文字を選択することを当初の目的とした。 【方法】被験児:精神薄弱養護学校3年次在籍男児1名。大脇式でのIQは56。これまでの指導では、机上学習の形態で、絵カード-単語カード、ドット-数字カードの見本合わせ課題を行っている。これらの見本合わせ課題では、レパートリーによっては刺激等価性が獲得されている。行動特徴としては、カウンターを操作して数を表現することが可能であるなど、機械類に興味がある。手続き:1)装置(特にキーボードへの馴化)、2)選択反応の決定、3)見本合わせ課題の実施、を当初予定した。 【結果および考察】キーボードへの馴化では、キ-に対して無差別に反応し、弁別的ではなかった。またキ-を押すとディスプレイへの表示が変わること自体が強化子として機能した。選択反応としては、できるだけ少数のキ-操作で比較刺激の選択ができるよう、2キ-操作で、あるキ-を押すことで選択対象の比較刺激がブリンクし、他のキ-で選択を決定することを予定していたが、ブリンク刺激の変化自体が強化機能を持ち、それだけにこだわることが予想されたので、手続きを変更した。机上学習で本児は数字の見本合わせを習得していたので、課題を文字から数字に変えた。またフルキーボードでは選択肢が多くなる、また他のキ-に反応してしまう可能性があったので、テンキーボードを使用した。その結果、ディスプレに表示したドットに対応して、テンキ-を選択することが可能になった。その後、フルキーボードを使用しても、その反応は維持された。つまり机上学習での課題を、パソコン上で再現することが可能になった。
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