本研究は、農民直系家族のあとつぎ確保戦略を分析することを目的とし、本年度は、岩手県沢内村、新潟県白根市における調査の実施を予定していた。 沢内村では、昨年(1993年)の7月31日〜8月4日に研究代表者単独で、8月15〜22日に7名の調査員とともに、同村長瀬野地区において、家族構成、就業構造、同居形態、農業経営、役割分担等の基礎的な項目ならびにあとつぎについての考え方、あとつぎ確保状況、あとつぎ確保のために努力したこと等の項目において調査を行った(76世帯)。前回の調査(昭和1986年)から7年が経過している訳であるが、村全体においても過疎化がいっそう進み、若年層とりわけ子供数の低下が甚だしかった。また、道路等の整備が進んだことによる通勤圏の拡大に、農業情勢の悪化などの影響が拍車をかけ、兼業化がより進展していた。あとつぎについての考え方もこれにともなう変化が顕著で、農業継承をその必須条件と考える人は減少し、老後の扶養をしてくれるということに重きが置かれるようになってきている。また、あとつぎ確保という考え方そのものにも変化が見られ、若年層の流出をやむを得ないことと考える人が多くなっていた。実際、村内の中小零細企業は労働力不足の状況に陥っている。これらの実態を踏まえた上で、より詳細な調査を重ね、農民直系家族の再生産のメカニズム、または再生産が困難になるメカニズムを探ることが今後の課題となる。 白根市に関しては、研究費の関係上、調査員による数量調査をせずに、白根市役所、農協、農業改良普及所における基礎資料集めと数戸の農家の聞き取りにとどまった(1993年10月〜11月)。都市近郊農村らしく、農業経営の継承があとつぎの前提条件という所見が得られたが、数量把握ができなかったため、前者との比較は困難であった。
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