集団の目標の実現という「公共財」の供給をめざす集合行為の失敗(社会運動組織の失敗、「オルソン問題」)という社会現象を念頭において、社会的意思決定の「意図せざる結果」に関する数理モデルや理論的研究のレビューを行った。その結果、ゲーム理論など合理的行為者モデル・合理的選択理論に依拠した研究においては集団内の要因が重視されているのに対し、資源動員論アプローチによる社会運動の成功/失敗に関する研究においては集団間の対立や協力などの要因が重視されていることが明らかになった。このレビューに関しては、既に論文としてまとめており、公表の予定である。 資源動員論が重視しているような集団間の異質性や集団間関係を考慮にいれた数理モデルとしては、James .Colemanの集合行為モデルがある。このモデルを意識しながら、新たな数理モデルの構築をめざした。この過程で、モデルの挙動を理解するために、コンピュータ・シミュレーションを試みた。 現在のところ、数理モデルの解析とシミュレーションの途中の段階であり、いまだ明確な結論を得ることができていない。今後も解析とシミュレーションを継続し、集団間関係と集団内の行為者の意思決定プロセスとが「意図せざる結果」の発生にどのようにかかわっているのかを明らかにしていく予定である。
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