本研究は、在宅において生活支援を必要とする高齢者や障害者などに対して、在宅保健福祉等のサービスを提供し、またはその調整を役割としてもっと考えられる緒機関における活動の実態と事例を研究することによって実践現場におけるケースマネージメントの現状と課題を明らかにすることを意図したものである。 日本の諸制度の下では、現在ケースマネージメントを実施する専門的機関もしくは機能と権限が与えられたものとして公的認知のある組織はないといってよい。そのなかで公的機関としては、保健所、福祉事務所、在宅介護センター(ディサービスセンター)などがあり、また医療機関、住民参加在宅福祉サービス供給団体においても必要に応じたケースマネージメントの機能を果たすことが求められている。以下事例研究等を通じての現状と課題を簡単に述べる。 まず公的機関においては、ケースカンファレンスや情報交換、組織的連携を図るための会議が設けられている場合が多い。この会議の機能がケースマネージメントの有効性の重要な鍵となると考えられる。セクショナリズムや縄張意識の中で組織間の関係がスムーズでなく、内容が事務連絡的なものであれば機能しないが、ケース担当ワーカーの協動の場となり、また所属機関の責任者等の参加を得てサービスの配置を即決できるようなシステムをもつなどによってサービスの配置、ケースマネージメントの有効性が高まると考えられる。民間の機関においては、公的機関の機能、役割の不明確さと、それぞれの組織の制約のなかでよりきびしい現状が明らかになった。しかし、住民参加型在宅福祉サービス供給団体自体がイニシアチブをとって活動する事例もあり、一つのスタイルとして評価することができる。
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