平成3年度に実施した大量調査について、本研究課題の独立変数に関わる未集計部分の集計を行った。一方、国内外の関連文献の収集およびレビューを行い、仮説的な分析枠組みを設定した。このモデルに従って、在宅障害老人の家族介護者が諸困難に取り組む態度や行動と定義された対処(コーピング)スタイルが、ストレス因果モデルのなかでどの様な因子の影響を受け、また及ぼしているのかを、パス解析を用いて分析した。また、対処スタイルがバーンアウトに与える効果につて、 (1)媒介モデル、 (2)ストレス緩衝モデル、 (3)主効果モデル、の3つのモデルへの適合性を検証した。 その結果、家族介護者のとる対処スタイルは、負担感を経由して引き起こされていることが示された。また、痴呆と介護の程度が増す程、「回避・情動型」対処スタイルが強まり、介護期間が長い程、「問題解決型」及び「接近・認知型」対処スタイルが促進することが判明した。さらに、「接近・認知型」対処スタイルはバーンアウトを抑制し、逆に「回避・情動型」対処スタイルはこれを増大させる方向に作用していた。 対処スタイルがバーンアウトに与える効果は、痴呆をストレッサーとした場合の「接近・認知型」にストレス緩衝効果がみられ、一方、「回避・情動型」について、老人の心身の障害と介護程度をストレッサーとした場合に媒介効果が、介護期間をストレッサーとした場合に主効果がそれぞれ認められた。 さらに、大量調査では把握困難な個別的、質的因子の影響をモデルに採り入れ、これを総合的に分析することを目的として、在宅重度障害老人20ケースについて、事例調査を現在実施中である。
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