本研究は、ECの労働市場統合、旧東ドイツの統合及び技術革新による、ドイツの職業教育制度の再編成過程において、(1)入学条件(一般教育制度から職業教育制度へ移行する際の一般教育修了資格)、(2)カリキュラム、(3)職業資格と労働市場の関係、(4)初期職業教育と継続教育及び再教育との関係、を分析することを試みた。その結果、専門上級学校Fachobersculeが職業資格と専門大学入学資格との接点となっており、上記課題を分析するために適切な事例であることが判明したため、これに分析を集中し、以下の知見を得た。 1.入学条件について。前期中等教育段階から職業教育制度に進む際、ハウプトシューレ修了証と実科学校修了証との相違はあまりない。どちらも多くはデュアルシステムへと進む。ただし実科学校修了証を持つ者の一部は専門上級学校へと進むことができ、専門大学入学資格を2年で取得できるのに対し、シャウプトシューレ修了証の者は職業訓練を修了しないと専門上級学校に入学できない点が異なる。 2.カリキュラムについて。2年の就学期間において、1年目が実務訓練中心、2年目が職業理論教育中心になっており、職業訓練を修了してきた者は2年目から入学することとなっているのが特徴である。 3.職業資格と労働市場との関係について。青少年の失業率の高さはドイツでも大きな問題となっている。専門上級学校は職業資格と密接に関連しつつ、専門大学入学資格を付与する学校であり、職業資格の向上を目指す者に有益な機関となっている。 4.初期職業教育と継続教育及び再教育との関係。デュアルシステムと専門上級学校とはカリキュラム的にも継続性があり、資格の向上にも資するものである。
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