研究概要 |
[目的]学習障害(以下LD)など比較的軽度の神経発達障害の児は,就学後不適応が顕在化する場合が多い,、学齢期用スクリーニング手法は十分に確立されていない。また,LDの概念はいまだに概念が明確ではなく,基盤となる神経障害の解明も十分ではないため,学習や生活指導の困難な児童に対してダストボックス的な診断名として用いられがちである。そこで神経学的微徴候と神経心理学的評価を組み合わせた学齢期の微細神経発達障害スクリーニング検査試案(Minor Neurological Sign検査(MNS))を構成し,教育場面での指導困難性と児の神経学的・神経心理学的障害とを同時に調査しその関連を検討した。 [対象]小学校2校の普通学級在籍1・2学年全児童の内,精神遅滞児1名を除く283名。 [方法]MNSは総計22項目の検査試案を実施し,スクリーニング基準はその内15項目について10パーセンタイル値未満が2項目以上の条件を採用した。別個の調査は(1)教師の訴え:担任教師により学習や生活指導上困難な児が任意に選択された。(2)LD児スクリーニング調査:担任教師によりLD児の講堂チェックリストが記入された。 [結果]教師が行動の指導困難を訴えた児は13名で,この内MNS低遂行児出現率46.2%であった。一方教師が行動と学習の両方の指導困難を訴えた字は児は17名でMNS低遂行出現率は88.2%であった。またLD危険児は7名でMNS低遂行85.7%であった。カイ2乗検定の結果,MNSと教師の訴え,及びMNSとLD児スクリーニング調査は危険率0.1%以下で有意な関連性が認められた。 [結論]教師は指導困難の理由として児の怠業や養育内容の問題を挙げていたが,行動や学習の問題の多くは微細神経発達障害の因子が大きい可能性が明らかになった。
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