本研究の目的は、縄文時代における野生根茎類・球根類の採集から加工にいたるまでの利用技術の実態を、民俗調査による資料と考古学資料の比較研究をとおしてあきらかにすることである。そこで考古学的な目的にそって野生根茎類、とくにクズ・ワラビに関する民俗調査を自分自身でおこない、採集・加工技術およびそれに付随する用具を記録したものである。民俗調査を実施した具体的な地域と調査内容は、以下のとおりである。 (1) 福井県立博物館において、福井県内のクズ粉製造ついての状況を調査し、小浜市須縄で使用されていたクズ粉製造用具を実測した。 (2) 福井県立若狭歴史民俗資料館において、同県小浜市内でかつて使用されていたクズ粉製造用具の実測と写真撮影をおこなった。 (3) 福井県遠敷郡上中町の熊川葛生産組合の尾中建三氏に、熊川におけるクズ粉製造について聞きとり調査を実施し、採集から加工にいたる工程の写真撮影と用具の実測をおこなった。 (4) 福井県遠敷郡上中町熊川に所在する若狭鯖街道資料館において、上中町新道で使用されていたクズ粉製造用具の写真撮影と計測をおこなった。 (5) 石川県羽咋郡押水町宝達の宝達葛生産組合の山本光幸氏に、宝達におけるクズ粉製造について聞きとり調査をおこない、用具の写真撮影をおこなった。 (6) 石川県七尾市小河内の高地葛生産組合の川上栄幸氏に、小河内におけるクズ粉製造について聞きとり調査をおこない、加工工程の写真撮影と用具の計測をおこなった。 (7) 鹿児島県曾於郡大崎町の(株)都食品の吉留一幸氏に、大隅半島におけるクズ粉製造について聞きとり調査をおこなった。 (8) 岐阜県大野郡朝日村胡桃島の小林繁氏に、同村秋神地区のワラビ粉製造について聞きとり調査を実施し、用具の写真撮影をおこなった。 (9) 岐阜県大野郡高根村日和田の小橋弥一氏に、同地区のワラビ粉製造についての聞きとり調査を実施し、加工工程の写真撮影をおこなった。 (10) 長野県南安曇郡奈川村の奈川村歴史民俗資料館において、同村でつかわれていたワラビ粉製造用具の実測と写真撮影をおこなった。
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