本研究の第一の目的は、考古学的発掘品であるか否かを問わず、良渚文化玉器を集成することにあった。考古学的発掘品については、中国で出版される考古学関係の雑誌類に発表された資料はもとより、施〓更著『良渚』をはじめとする最初期の報告書類をも入手することができ、現時点でその存在の公表されている良渚文化玉器のほとんどに関して写真・拓本あるいは実測図を入手することができた。 一方、考古学的な発掘調査を経ずに出土した良渚文化玉器も少なくない。それらは歴代の図譜類に掲載されていたり、あるいは博物館・美術館の所蔵品として知られるものである。まず図譜類に関しては、『古玉図考』、『尊古斎古玉図録』、『有竹斎蔵古玉譜』等に良渚文化のものであることの確実な例品を確認することができた。また、博物館・美術館所蔵品に関しては、各館の図録類および個別の著書・論文をほ渉猟することによって、中国国内においては中国歴史博物館、故宮博物院、上海博物館、北京首都博物館等に所蔵品の存することを確認し、また海外においては、台湾、香港、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本に例品のあることが判明した。それらの多くについて写真・拓本・実測図を集めることができた。特に、台湾故宮博物院の所蔵品は質・量ともに他を圧倒するものであり、現在、同院の研究者と連絡をとり、実見の機会を持つべく計画中である。 このようにして収集した資料はデータベース化し、資料操作の簡便化を図るとともに、型式学などの考古学的方法を用いながら整理分類を進めつつある。現時点では良渚文化玉器を11期に編年できることが明かとなり、良渚文化研究に多大の進展をもたらすことが可能となった。また、各器種の用途や、玉器が副葬された墳丘墓につしても考察を進めており、編年案とともに近く研究成果の公表を行う予定である。
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