研究概要 |
接続助詞「カラ」の談話における用法を調査するために、謝金による研究補助員に依頼して、テレビドラマのシナリオおよびコミックスを対象に、接続助詞「カラ」の全用例を抜き出す作業を行い、1,170例を収集した。 収集したデータを整理し、分析した結果、次のようなことがわかった。 (1)「理由」を表わさない「カラ」の全用例の用法について 「S_1カラS_2」が理由を表わさないとき、 a.S_1には、かならず、聞き手のなんらかの行為を要求する表現(命令・禁止・依頼・勧誘など)が来る。 b.S_1は、S_2を聞き手が実行に移すのを可能にしたり、促進したりする情報として提示される。 c.「カラ」の談話的な機能は、新情報S_1を聞き手の知識のなかに導入することによって、それ以前の段階では聞き手が実行に移せなかった行為を実行可能な状況にすることである。 (2)「理由」を表わす「カラ」と「カラダ」の違いについて a.「S_1カラダ」を使うときは、S_2という事象について、その理由を同定(判断)するプロセスを含むのに対し、「S_1カラ。」の場合は、そのようなプロセスはない。 b.「S_1カラダ」を使う場合、言語的・非言語的文脈の中で、話し手・聞き手の間に、「ドウシテS_2ノカ」という問題設定がされており、それに対する解答として発話される。 c.「S_1カラ。」を使う場合は、S_2という事象は、S_1という既に明らかな事実の自然な帰結として自己納得されている。つまり、「ドウシテS_2ノカ」ということは問題にされていない。
|