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『海外異聞』を中心とする漂流記集の成立と展開についての文学的研究-漂流記は文学の一ジャンルたりうるか-

研究課題

研究課題/領域番号 05710271
研究種目

奨励研究(A)

配分区分補助金
研究分野 国文学
研究機関新見女子短期大学

研究代表者

石上 敏  新見女子短期大学, 教養科, 講師 (60201315)

研究期間 (年度) 1993
研究課題ステータス 完了 (1993年度)
配分額 *注記
900千円 (直接経費: 900千円)
1993年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
キーワード漂流記 / 森島中良 / 海外異聞 / 近世文学 / 蘭学 / 石井研堂 / 圏外文学 / 実録
研究概要

漂流記の大多数は、近世末期に集中して現れる。いわば近世末期、漂流記は文芸の一ジャンルを形成していた。「紀行」でありまた「実録」である「漂流記」の多くは、「読み物」として読み継がれたのである。明治期以降も漂流記物が「読み者」として人気を得たのは、漂流記が文芸の一ジャンルと化していたからにほかならない。漂流記の流布に関しては、蘭学者や好事家のネットワーク・貸本屋の存在などが考えられる。実際の写本総数から見て、漂流記集の形で漂流記が流布したのは全体のおそらく一割程度であろう。ただし、それら特定の「場」に漂流記は集合し、そこから複写される形で流布していった。特定の漂流記が流布する契機をそれら漂流記集が加担した割合は高く、それらを集中的に管理・保存し、全体として流布される役割を「漂流記集」が果たした。当初『海外異聞』がもった積極的な「規範」のみを予測したが、例えば漂流記集の系譜が地域別・時代順という配列を取ることが殆どなかったというようなマイナ-な規範をも『海外異聞』が作り出した気配がある。またそれは漂流記の文芸的価値が資料的価値を上回ったことをも示す。これをもっとも端的に表すのが、明治に入って成された石井研堂の集成であろう。彼の成した数次の漂流記集成は、間違いなくそれらの文学的価値に保証されていたし、彼の集成によって「文学としての漂流記」は、明確に再浮上することとなった。特定の漂流記が人口に膾炙するに至る過程は、考証随筆や実録を思わせる。同一の素材が変化することは写本型文芸の通例であるが、それよりもなお大きな幅で物語化する場合があることは、このジャンルの特性といえる。「聞き書き」である「調書」が一人称の「語り」と化し、さらに「物語」化する過程を具体的に示す事例にはこと欠かない。漂流記を「圏外文学」としてではなく近世後期の文学状況の内に位置づける作業が今後必要となるであろう。

報告書

(1件)
  • 1993 実績報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (5件)

  • [文献書誌] 石上 敏: "森島中良晩年の文事-『俗語解』を中心として-" 東洋文化. 71. 9-20 (1993)

    • 関連する報告書
      1993 実績報告書
  • [文献書誌] 石上 敏: "万象亭森島中良年譜稿" 新見女子短期大学紀要. 14. 217-257 (1993)

    • 関連する報告書
      1993 実績報告書
  • [文献書誌] 石上 敏: "森島中良編『海外異聞』の位相-江戸時代漂流記集の成立と展開に関する考察-" 洋学資料による日本文化史の研究. 7. 1-24 (1994)

    • 関連する報告書
      1993 実績報告書
  • [文献書誌] 石上 敏: "森島中良集(叢書江戸文庫)" 国書刊行会, (1993 29HE01:420)

    • 関連する報告書
      1993 実績報告書
  • [文献書誌] 石上 敏: "万象亭森島中良の文事" 翰林書房, (1994 29HE02:560)

    • 関連する報告書
      1993 実績報告書

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公開日: 1993-04-01   更新日: 2016-04-21  

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