本研究は、日本語と英語の、謝罪と謝罪に対する応答の仕方を用例をもとに分析し、謝罪に関する日英のコミュニケーション・ルールの一端を明らかにすることを目的としている。 謝罪は、人とのやりとりにおいて相手に実質的あるいは潜在的な損害や不快感を与えた場合、その状況を適正なものにしようとして行う修復行動の一つである。謝罪は一見日本語と英語に共通な行為のように見えるが、謝罪を必要とする場面の認識、使われ方、使う際の話者の意識・姿勢等には違いがあるように思われる。 本研究では、日英のテレビや映画の脚本を資料として謝罪の用例を収集し、日英の謝罪のストラテジーについて考察した。また、質問紙調査によって得られた、(1)設定した謝罪誘発場面での言語行動、(2)その場面がやりとりの相手に対してマイナスとなる程度の評価についてのデータをもとに、日英の謝罪のしかたをストラテジーの使用頻度、使用ストラテジーの数・組み合せについて分析し、日英それぞれの文化社会におけるfaceという視点から考察を試みた。そして、日本人の謝罪は多くのストラテジーを使うのでなく低姿勢でひたすら謝る形をとり、説明・弁明のストラテジーが好まれないタイプであるということ、一方、アメリカ人の謝罪は謝罪の表明に説明や補償の申し出を行うなど、いくつかのストラテジーを併用するタイプであるということを示し、faceという視点から謝罪の意味・機能について考察した。
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