旧ソ連の取引社会における生ける法を知る手がかりは、教科書等にではなく、新聞、雑誌に潜んでいる。本研究においては、このテーマにもっとも関連する情報を提供してくれる雑誌である“Xoziistvo i pravo"(経済と法)を、一部欠号はあるものの、1977年の創刊号から1990年までの14年分を現物で揃えることができた。これにより、旧ソ連の取引社会が大きく変動し始めるブレジネフ末期からペレストロイカを経て、市場経済化を進めるに至った旧ソ連の法と経済の実態を把握する基本的資料を手に入れることができた。これ以外の資料としては、北大のスラブ研究センターが所蔵する多くの新聞、雑誌の記事を複写して利用した。取引をめぐって紛争が生じたときに重要な役割を果たす仲裁裁判制度に関する新たな雑誌も購入した。旧ソ連の社会の実態を知り、よりよく理解するために、旧ソ連や東欧社会主義圏の社会や文化に関する邦語文献も購入した。日本にない関連文献の所在を知るために、海外の文献データベースにアクセスして必要な情報を得た。 以上の文献等から得られた情報を整理、分類するために必要で有用な、パソコンソフト、ハードディスク、カラーモニター、CD-ROMドライブを購入した。 旧ソ連の取引実態をよく知る経済学者とのインタビューも行った。 これらの研究環境の下で、具体的には、まず、旧ソ連と現ロシアにおける担保法および土地所有制度に関する研究を行い、これを所属学部の研究紀要に発表した。やはり、書かれた法と現実の法との間には大きな違いがあることがわかった。引き続き、現在は、企業間取引において発生した紛争の解決に大きな役割を果たし、これからも果たすであろう仲裁制度に関する実証的研究を進めているところである。
|