まず、地方自治体レベルでの外国人の選挙権を認めるハンブルグ及びシュレスビヒ=ホルシュタイン・ラント法律を違憲としたドイツの連邦憲法裁判所1991年10月31日判決にいたる状況を、調査した。ここでは、1973年の外国人労働者募集停止とそれに伴う外国人住民の統合政策が(西)ドイツがこの問題ととりくむ転機となったこと、またハンブルグの区議会の特殊性を考慮に入れる必要があること、連邦憲法裁判所の判決以前にも定住外国人の政治意識の高まりにより行政裁判所レベルでいくつかの訴訟が起こされたこと、が重要である。 次に、憲法裁判所の判決の論点としては、国民主義、民主主義、連邦制、平等原則が重要であるが、とりわけ憲法におけるVolkの概念が重要である。連邦憲法裁判所の判決は、このVolk概念を絶対的に解釈し、地方自治体レベルでも外国人に選挙権を付与することを違憲としたのであるが、これに対しては、この概念を相対的に解釈しその概念の変化=変遷を主張し、また国家レベルでのVolkと地方自治体レベルでのVolkを切り離す見解が注目される。また、10月31日判決の内容として、憲法改正により外国人に選挙権を付与することを否定していないことに留意すべきであり、それに添ってEC統合に際して基本法(憲法)の改正が行なわれた。しかし、国民主権原理は基本法の明文で憲法改正の限界とされており、基本法改正により外国人に選挙権を付与することは違憲であるとの学説も有力であり、理論的問題点を残している。
|