1.わが国の実務の実態と問題点 実務家との会合により、(1)わが国においても近年国際的要素を有する信託の利用が増加しつつあること、(2)しかしながら、実務界においては、必ずしも国際的信託に対する適用法規の問題に関して十分に対応できているわけではないことが判った。特に、わが国の信託会社が受託者となる国際信託については、信託会社としては日本法が準拠法になるとの根拠のない希望的観測の下に、受託を行っている。国際信託の準拠法について明確な指針を示すことが、学界に要請されているといえよう。 2.諸外国における国際信託の規整 信託が頻繁に利用されている米国では、信託の準拠法に関する法状態として、抵触法第二リステイトメントの規則がほぼ一般に承認されているといえる。そこでは、原則として当事者自治の原則が認められているが、他方で信託事務処理地法や不動産所在地法も十分に考慮されている。 3.わが国際私法における信託の準拠法 わが国際私法において国際信託をいかに規整すべきかという問題の検討は、今後の課題である。この課題についての検討を含む、本研究の最終的成果は、「信託の準拠法」とのテーマで、今春(平成6年5月)の第90回国際私法学会にて報告する予定である。
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