国際連合が内戦に関わろうとする場合、その行動は、「国際の平和と安全の維持」という目的と、「国内管轄事項への不干渉」という原則に規律される。本年度の研究では、主に、内戦に対して国連が介入した冷戦終結以前の諸事例(レバノン、コンゴ、キプロス、イエメン等)において、上記の目的と原則が、内戦に対する国連の介入機能をいかに規律しているのかを検討した。 「国際の平和と安全の維持」という目的に関しては、大別して、(1)外国からの干渉により内戦が発生しており、そうした干渉を防止することと理解されている場合と、(2)一国において発生している内戦に外国が干渉することを防止することと理解されている場合があるが、いずれにしても、外国からの干渉を防ぐことが念頭に置かれていたと言ってよい。そして、(2)の場合には、外国からの干渉を防ぐという目的のため、国連は、国内における法と秩序の回復や戦闘の停止を確保するための機能を果たそうとしたのである。 「国内管轄事項への不干渉」という原則については、(1)いわゆる「叛徒」が外国の傀儡であると判断された場合に、その「叛徒」に対して武力行使を行うこと、また、(2)内戦の紛争当事者の指揮命令系統を離れた武装集団を武力によって武装解除することは、国連憲章第7章に基づく強制措置として行われなくても、同原則に反しないと理解されていた。また、国連の実行からは、「叛徒」が、既存政府が受け入れた国連安全保障理事会の決議によって法的に拘束されることも導き出される。しかし、これら以外の場合には、国連が内戦において「国際の平和と安全の維持」という目的のための機能を果たすのにあたって、「叛徒」の同意を得ることが、「国内管轄事項への不干渉」原則の下で要求されているとの国連の理解が、その実行から読み取れる。
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