1、フィリピンの環境法について、以下の知見が得られ、現在、「都立大学法学会雑誌」に掲載予定(締切:94年4月中旬、刊行:94年夏頃)の論文を執筆中である。 (1)まず、フィリピンの環境は、森林伐採・水源汚染・土壌侵食・海洋資源の減少など、危機的な状況にある。 (2)その原因は、国内的側面からみると、先進資本主義国と異なり、「貧困」問題が作用している点であり、貧困が環境悪化を生み、逆に環境悪化が貧困を生む悪循環(「貧困と環境悪化の悪循環」)構造がみられる。 また、国際的側面からみると、先進資本主義国(特に日本)が、貿易・投資・援助の3つの局面において相補い合って、フィリピンを経済的に疲弊させ、同時に環境問題の原因を作っている。 (4)フィリピンの開発法は、日系企業も含む多国籍企業との連携のもとで、1970年代前半からのマルコス体制のもとで本格的に展開する。 (5)同時に、この同じマルコス体制のもとで、70年代後半に、環境法の整備(環境法典・環境影響評価制度など)が、大統領主導で行われるが、実際には、実行性にはかなりの疑問があった。 (6)しかし、86年のマルコス体制崩壊後、非政府組織(NGO)の活動が活発化し、これら環境法が機能する兆しが現れ、多国籍企業の関与する個別の大型開発プロジェクトの問題点が指摘されることが多くなった。 2、インドネシアの環境問題については、なお、環境法制も含めて十分に把握するところまでいってないが、「インドネシアの環境問題についての若干の紹介」(「福島大学行政社会論集」に連載中)は、その(3)(93年10月)まで公にされている。
|