今年度は、裁判官による契約改訂が問題となる諸場合のうち、特に「一部無効」に照準を当てて研究を進めた。日本民法には、契約の一部に無効原因がある場合に契約全体の効力がどうなるのかについて一般的に定めた明文の規定は存在していないが、ドイツ民法(139条)、スイス債務法(20条)、イタリア民法(1419条)等には、一般的・原則的な規定が置かれている。そこで、それらの規定が設けられた経緯、立法理由を探り、また、民法制定後に、それらの規定が実際の裁判においてどのように機能してきたのか、そこでは一部無効の判断と私的自治との矛盾ないし衝突が問題とされなかったのか、どのような形でその矛盾は克服されてきたのか等を検討する必要があると考え、それぞれの立法資料、判例、論文等を調査、収集してきた。現在、資料収集を継続するとともに、収集できたものについては、これを整理し、分析・検討を進めているところである。 一方、日本民法については、一部無効の効果に関する一般的規定が設けられなかった理由はどこにあるのか、立法者は一部無効の問題についてどのように考えていたのかについて、資料を収集し、現在検討中である。日本民法が一般規定を設けなかったことには、フランス法の影響も考えられるので、今後は、フランス法についても検討していきたいと思っている。
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