地域活性化政策のモデルケースとして、米国ペンシルバニア州ピッツバーグ市の都市再開発について調査と分析をした。かつての鉄鋼都市ピッツバーグは典型的な斜陽産業都市であったが、今では企業投資の活発な、しかも住みやすい街として再生した。ピッツバーグの再生の鍵は、その活性化の捉え方と担い手に求められる。企業にとっても、住民にとっても、魅力的な都市となるには、都市基盤整備や産業刺激策だけでは不十分で、良好で安全な住環境づくりや近隣商業地区の発展といったコミュニティー開発が不可欠であるということを、ピッツバーグの経験は示していた。とりわけコミュニティー開発の担い手としての住民自治組織CDC(Community Development Corporations)の存在と役割は重要で、しかもこれまで日本ではほとんど紹介がされてこなかったものである。行政と企業のパートナーシップ(官民協力)だけでなく、行政と住民のパートナーシップが都市活性化政策で重視されていることが、日本の都市活性化政策との大きな相違であった。 ここで得た知見を基礎として比較分析を展開するためには、戦後資本主義諸国の地域活性化=地域開発政策を理論的なパースペクティブから整理する必要があると考えるにいたった。そこで戦後の典型的な地域開発政策をフォーディズム的地域開発政策と理論的に整理し、その行き詰まりが明白となった段階で登場してきたのが開発戦略のオルタナティブとしての内発的発展論(内発的開発)であると位置づけ、内発的発展論との距離、親和性の度合いが近年の各国・各地域の活性化政策の相違の根底に存在していることを提起した。 今後はこのような理論的フレームワークに基づいた事例研究をさらに進めていく予定である。
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