理論的研究成果:変数変換が単位根や共和分関係の検定に与える影響については、Granger and HallmanやErmini and Grangerが、モンテ・カルト実験やエルミート多項式を利用した研究を行っている。しかし、これらの研究の目的は、誤った特定化が変数変換によって発生する場合に従来の検定方法がどのような影響を受けるのかを分析するもので、真の変換を求め単位根や共和分関係を検定するという接近方法ではない。よって、回帰分析で用いられるボックス・コックス変換の係数推定法の有効性や求められた係数のもとでの単位根や共和分関係についての検定の有効性を検証する事は未解決の問題となっている。理論的研究では、現在のところ検定統計量の分布を求める事は難しく、モンテ・カルロ実験を用いて分析する以外にないことが明かとなった。 モンテ・カルロ実験による成果:実験により検定方法の有効性は、推計時における説明変数にドリフト及びトレンドがあるかないかに大きく依存していることが明かとなった。まず、ドリフトやトレンドをいれない場合には、少なくとも小標本では最尤法もベイズ法も正しく変換の係数を推計することができず、極端に大きな値や小さな値を推計し、検定ができないことがわかった。ドリフトやトレンドをいれない場合には、概ね正しい係数を推計することができるが、検定のサイズがやや異なっており、パワーも高くないことが分かった。標本の大きさに応じた具体的な棄却域を求めるには、更に高速な計算機を用いて大がかりな実験が必要であるが、これについては時間的制約のため、現在進行中である。日本の経済時系列データについても適用したが、上記の問題のためはっきりとした結果を得ることができなかった。 今後の展望と成果の発表について:実験の結果は従来の研究に対して非常に示唆的であるので、海外の雑誌に投稿すべく実験結果のみをまとめた英文の論文を準備中である。
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