研究概要 |
今回の研究で明らかにしようとした仮説的枠組みの概要は、以下のとおりである。 1.日本の系列店制度は、基本的には,人的で緊密な協調的関係に基づく分権的なチャネル管理に依存しており,その管理様式の特徴のために,需要不確実性への適応や効率的な情報・物的処理において限界が生じてきている。 2.そのために近年の情報処理の技術改新を取り入れた情報化とともに,チャネル管理を集権的なものに転化する傾向が顕著となった。 3.このことが分権的なチャネル管理を支えてきたリベート,派遣店員,再販売価格維持,返品制度などの系列店制度の主要な特徴を縮小,撤廃させる傾向をもたらす原因となっている。 4.さらに系列店との協調的関係の後退から,大規模小売業者との取引拡大が許容され,小売段階における価格競争が促進される傾向にある。 以上のように日本における系列店制度,およびそのもとでの日本的取引慣行の変化を説明し,これらの仮説に関わる過去の経済学的研究や行動科学的なチャネル研究の理論を整理,統合するとともに,これらの仮説を統計的データに基づいて検証した。 そして流通段階における情報化が系列店制度における企業間関係や取引慣行を変えることや,小売段階の価格競争を促進させること,および,流通構造を大規模小売業者比率の高い段階数の少ない構造にすることを明らかにした。
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