本研究は、General Electric Co.をはじめ、日米企業のケースをとりあげ、「マーケティング・コンセプト」をめぐる企業実践の変遷を解明しようとするものであった。 一般に「マーケティング・コンセプト」は考え方、思想として見られ、実際にどの様な企業行動や企業の状態を意味するのか、明示的ではなかった。そこで1950年代に「マーケティング・コンセプト」を意識的に導入しそれをアピールした先駆的企業の1つであるGEが、当時最大の課題としていたことは分権制の徹底であったことに着目して、以下の点を明らかにした。 事業部制の導入は単に事業部を区分するというのではなく、個人レベルでの分権化を意味していた。この実現のために、マネジメントに関する本格的教育体系の確立が行われている。また個々のマネジャーのマネジメント・プロセスが定式化された。すなわち、計画化、組織化、統合、測定である。計画立案は各マネジャーのレベルにおろされた。マネジャーの基本的目標は、顧客のニーズの実現、革新、チームワーク(生産性)、競争優位におかれていた。統合として、自己規律を中心とする組織文化づくりがめざされた。さいごに、部門、事業部、個人の業績評価の基準について、8つの主要な成果領域を設定した。これは全体として、事業部制組織を統一的に運用するためのマネジメント・コントロールの体系であるが、同時に、その内容が「マーケティング・コンセプト」と全面的に合致している。分権制下での企業行動の方向づけとして、「マーケティング・コンセプト」が展開されたことは、この点から明らかである。 CS経営についての調査は準備調査の段階にとどまった。
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