資本主義対社会主義の対立構造が崩壊した後、資本主義の構造そのものが各国で一様ではないことが注目されるにいたった。いわば「資本主義対資本主義」の対置である。わが国経済力の脅威的な成長・継続が国際比較の必要性を増大させている一因であることは言うまでもない。同時に、「日本型システム」は従来の理論からのアプローチでは必ずしも明確に説明できず、国際社会の中でその在り方が問われている。「日本型Corporate Governanceシステム」の構造をとくに会計制度とのかかわりで検討し、何らかのインプリケーションを提示することが本年度の研究目的である。 Corporate Governanceシステムは、大きく(1)伝統的モデル(アメリカ型/株主中心の企業観)、(2)ヨーロッパモデル(ヨーロッパ型/株主と従業員を中心とする企業観)、(3)利害関係者モデル(理想型/利害関係者の集合とみる企業観)に分類して考えるのが有効であろう。わが国は(2)と(3)の中間に位置する。会計制度とのかかわりをみれば、証券市場での有用性を理論的背景におくアメリカ型、付加価値会計を歴史に有し、従業員への経営情報の提供を志向するヨーロッパ型に対し、わが国はその企業観とは異なり、企業(経営者)の意図が反映されやすい柔軟な構造を形成してきたといえるであろう。 会計情報公開には(1)アカウンタビリティと(2)正統性の2つのアプローチが考えられる。企業観の変化とともに、企業の正統化を図るための情報内容は多様化する。環境情報の開示はその一例である。企業権力の相対化を図るCorporate Governanceは合法的支配ではなく、企業と社会との合意・承認形成プロセスとして分析する必要がある。
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