企業環境の変化に伴い製品開発プロセスが従来の分業・直列型のアプローチから重複的なアプローチに変化している。そこでは、製品開発が多様な職能部門を巻きこんだクロスファンクショナルな活動として展開されている。製品開発に関与する多様な部門間に効果的な情報の交換と協力関係を確保するためには、メンバー間に相互信頼関係を醸成し、また部門の協力した結果については共同で責任を負わせることが必要とされる。このためには個々のメンバーがチーム全体の成功にコミットし、全体の最適化のために各々の意思決定が行われているという認識を持たせることが必要であろう。個々のメンバーが意思決定を行なうにあたって、その意思決定が全体の業績に対してどのような影響を及ぼすかを明らかにするような情報を与え、その情報に基づき各メンバーを評価することが考えられる。さらにこれまでの事例研究からクロスファンクショナルな活動を促進している可能性のある実務として、株式会社リコ-のコクトリスクマネジメントに関するケースと日産自動車のフォーカスアップのケースをとりあげ検討した。例えば、リコ-では事前に試作・量産段階までにコスト変動を及ぼす可能性のある要因と把握し、そのコストを見積もっている。その後実際の設計構想、レイアウト設計、また詳細設計の段階で行われるコストデザインレビューを通じて、各ユニット別のコスト目標の達成の程度やVE案の実現の程度、またコスト変動リスクの審査が行われる。このような評価システムの確立も部門間での情報の交換を促進する1つの要因でもあるかもしれないことを示唆した。
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