(1)一変数保型形式の空間の「テ-タ級数に起因する分解」の研究は素数レベル・合成数レベル共に未だ数値実験の域を出ていないが、合成数レベルの場合も素数レベルと同様、アトキン-レナー対合のマイナス固有空間の1次元部分空間については「ブリューマ-土井の合同式」との関係が観察された。 現在、数値実験の為に開発したプログラムをワークステーションに移植する作業を進行中であり、例えばテ-タ級数のデータをより大きいレベルまで計算している。また他の研究者の為にこれらのプログラムやデータをネットワーク上で公開する準備も進めており、特に二次形式のデータは数表の形で発表した。 (2)合成数レベルの保型形式に「対をなす固有関数」が現われる現象はアトキン-レナー対合の作用から説明できることを解明し、論文に発表した。大まかに言うと、合成数レベルではアトキン-レナー対合が沢山(レベルの約数個)存在するため、テ-タ級数の間に沢山の関係式を誘導し、その状況次第では異なる固有関数が類似の結合係数を持つことになる。アトキン-レナー対合の跡公式を計算することにより、この様な「対をなす固有関数」が存在する為の十分条件を、具体的にレベルを割る素数の平方剰余記号を用いて幾つか与えることができた。 また、「対をなす固有関数」に対応するヴェイユ曲線の間に何らかの類似点が見られることを期待し、クレモナの表を用いて観察を続けている。 (3)直交群上の保型形式の理論に導入された「志村級数」の研究については大きな進展は得られなかった。
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